コラム

2026/02/25 コラム

【受給資格チェックリスト】建設アスベスト給付金の対象者は?簡単診断と要件解説

はじめに

長年、建設現場で従事されてきた方々の中には、退職後や高齢になってから、咳や息切れ、胸の痛みといった症状に悩まされている方が少なくありません。もし、そのような症状の原因が、かつての業務中に吸い込んだアスベスト(石綿)にあるとしたら、国からの給付金を受け取ることができる可能性があります。

2021年(令和3年)6月、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律(建設アスベスト給付金法)」が成立し、建設現場でのアスベスト被害に対する国の責任に基づく新しい給付金制度が始まりました。これにより、これまで裁判を起こさなければ認められなかった賠償が、所定の要件を満たすことで、訴訟を経ずに受け取れるようになりました。

しかし、この制度は対象となる期間や職種、病状などが法律で細かく規定されており、一般の方にとっては「自分が対象になるのかどうか」を判断するのが難しいという側面があります。「自分は一人親方だったから無理だろう」「もう何十年も前のことだから関係ない」と、ご自身で判断して請求を諦めてしまっているケースも見受けられます。

本記事では、建設アスベスト給付金の受給資格について、分かりやすいチェックリスト形式で解説します。ご自身やご家族が給付金の対象となる可能性があるか、まずはこの診断を通じて確認してみてください。そして、少しでも可能性がある場合は、専門家への相談を検討するきっかけとしていただければ幸いです。

Q&A:受給資格に関するよくある疑問

まずは、受給資格について多くの方が抱く疑問点について、Q&A形式で解説します。

Q1. 建設会社に雇われていたわけではなく、「一人親方」として働いていました。給付金の対象になりますか?

はい、対象となる可能性があります。

建設アスベスト給付金制度の大きな特徴の一つは、労働者(会社員)だけでなく、「一人親方」や「中小事業主(家族従事者を含む)」も対象に含まれている点です。

かつての国の責任を認めた最高裁判決において、労働者だけでなく、現場で共に働いていた一人親方等に対しても国は責任を負うべきであると判断されました。ただし、労働者と一人親方等では、給付の対象となる期間(始期)が異なる場合がありますので、詳細な確認が必要です。

Q2. 対象となる期間はいつからいつまでですか?また、その期間ずっと働いている必要がありますか?

対象期間は原則として「昭和50101日から平成16930日」(吹付作業の場合は昭和47101日から昭和50930日)の間です。

この期間のすべての期間働いている必要はありませんが、医学的な知見に基づき、一定期間以上のアスベスト曝露作業に従事していたことが求められます。必要な従事期間は、発症した疾病の種類や作業内容(吹付作業か、その他の屋内作業かなど)によって異なります。例えば、石綿肺の場合は比較的長い期間の従事が必要とされる傾向にあります。

Q3. 夫は既に亡くなっていますが、妻である私が代わりに請求することはできますか?

はい、ご遺族による請求が可能です。

アスベスト被害により亡くなられた方のご遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で優先順位が決まります)は、ご本人に代わって給付金を請求することができます。亡くなられてから時間が経過している場合でも、請求期限(時効)内であれば権利は残っています。ただし、医学的な資料(カルテやレントゲン画像など)の入手が時間の経過とともに難しくなるため、早めの行動が重要です。

解説:【受給資格チェックリスト】と詳細要件

それでは、実際に給付金の対象となるかどうか、3つのステップで確認していきましょう。これはあくまで簡易的な診断ですので、最終的な判断は専門家に相談することをお勧めします。

ステップ1:基本要件チェック(はい/いいえ)

まずは、以下の3つの質問に答えてみてください。すべてに「はい」と答えられる場合、給付金の対象となる可能性が高いと言えます。

  1. 【病気】 医師から、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水のいずれかの診断を受けたことがありますか?(または、亡くなられたご家族の死因がこれらに関連していますか?)
  2. 【職業】 過去に、建設現場において、建物の建設、解体、改修などの作業に従事していましたか?
  3. 【期間】 その作業に従事していた期間は、昭和47年(1972年)から平成16年(2004年)の間に含まれていますか?

いかがでしたでしょうか。これらに該当する場合、次の詳細な要件を確認していきましょう。

ステップ2:対象となる「病気」の詳細確認

建設アスベスト給付金の対象となる疾病(指定疾病)は、以下の5つに限定されています。単に「肺が悪い」というだけでは認定されず、医学的な厳密さが求められます。

(1) 中皮腫(ちゅうひしゅ)

胸膜(肺を覆う膜)や腹膜などにできる悪性腫瘍です。アスベスト曝露との関連性が極めて高い病気であり、発症していれば、比較的短期間の曝露でも認定される可能性があります。

(2) 肺がん(原発性肺がん)

アスベストを吸い込むことで発症する肺がんです。ただし、肺がんは喫煙などの他の要因でも発症するため、アスベストが原因であると認められるためには、「石綿肺の所見があること」や「広範囲の胸膜プラーク(肥厚斑)があること」、あるいは「一定期間以上のアスベスト曝露歴があること」などの追加要件が必要となります。

(3) 著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺(せきめんはい)

大量のアスベストを吸入した結果、肺が線維化して硬くなる病気(じん肺の一種)です。給付金の対象となるのは、以下のいずれかに該当する場合です。

  • じん肺管理区分が「管理4」相当であること。
  • じん肺管理区分が「管理2」または「管理3」相当で、かつ、合併症(肺結核、結核性胸膜炎など)がある、または著しい呼吸機能障害があること。

(4) 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚

臓側胸膜(肺側)と壁側胸膜(胸壁側)が癒着し、厚くなる病気です。これにより肺が膨らみにくくなり、呼吸機能が低下します。「著しい呼吸機能障害」を伴っていることが要件となります。

(5) 良性石綿胸水

胸膜の炎症により胸水がたまる病気です。こちらも「著しい呼吸機能障害」を伴っていることが要件となります。

※「著しい呼吸機能障害」とは?

具体的には、パーセント肺活量(%VC)が80%未満であることや、動脈血酸素分圧などの数値が一定の基準を下回っていることなどを指します。これらは呼吸機能検査の結果によって判断されます。

ステップ3:対象となる「作業・職種」と「期間」の詳細

建設アスベスト給付金は、すべての建設作業員が対象となるわけではありません。アスベストの粉じんを吸入する機会が多かったと考えられる作業に従事していたことが条件となります。

(1) 対象となる作業内容

  • 吹付作業: 建物の鉄骨や壁などに、アスベスト(石綿)を吹き付ける作業。最も曝露量が多いとされ、重視されます。
  • 屋内作業: 建物の内部で行う作業全般。大工、内装、電気、配管などの作業中に、建材の切断や研磨によって発生した粉じんを吸い込むリスクが高いため対象となります。
  • 屋外作業について: 屋根や外壁などの屋外作業のみに従事していた場合は、原則として対象外とされる傾向にありますが、作業環境や内容によっては対象となる余地も残されています(例:足場で囲われた半屋内的な環境など)。個別の検討が必要です。

(2) 対象となる職種の例

以下のような職種で、屋内作業を行っていた方が主な対象です。

  • 大工(型枠大工、造作大工など)
  • 左官工
  • 塗装工(吹付工を含む)
  • はつり工、解体工
  • 内装工、軽天工
  • 断熱工、保温工
  • ダクト工、配管工
  • 電気工
  • サッシ工、建具工
  • タイル工
  • エレベーター設置工 など

(3) 期間と身分の組み合わせ

ご自身の身分(労働者か一人親方か)によって、対象となる期間(国の責任期間)が異なります。

  • 労働者(雇用されていた方):
    • 石綿吹付作業: 昭和47101日 〜 昭和50930
    • 一定の屋内作業: 昭和50101日 〜 平成16930
  • 一人親方・中小事業主等:
    • 石綿吹付作業: 昭和47101日 〜 昭和50930
    • 一定の屋内作業: 昭和50101日 〜 平成16930

(※注:厳密には、吹付作業については昭和47年から労働者・一人親方共に責任期間が始まりますが、屋内作業については昭和50年から等の区分けがあります。また、それぞれの職種や作業内容によって責任期間の終期が異なる場合もあります。上記はあくまで目安です。)

ステップ4:除外事由・減額事由の確認

対象となる場合でも、以下の事情がある場合は、給付金額が調整されることがあります。

  • 喫煙習慣: 肺がんの場合で、喫煙歴がある場合は、給付額が1割減額されることがあります(例:1,300万円の場合、1,170万円に)。ただし、石綿肺や中皮腫の場合は、喫煙の有無による減額はありません。
  • 曝露期間の短さ: アスベスト曝露期間が短い場合、満額ではなく減額された給付金となる場合があります。
  • 他制度との調整: 過去に国に対する訴訟で和解金を受け取っている場合などは、その分が差し引かれます。

弁護士に相談するメリット

上記のチェックリストで「自分は対象かもしれない」と思われた方はもちろん、「判断がつかない」「一部当てはまらない気がする」という方も、まずは弁護士へ相談することをお勧めします。なぜなら、ご自身の判断だけで諦めてしまうには、あまりにも制度が複雑であり、かつ専門的な検証によって結論が変わる可能性が大いにあるからです。

1. 「対象外」という誤解を防ぐ

「自分は屋外の作業が多かったから無理だ」「職種名が一覧にない」といった理由で諦めてしまう方がいらっしゃいますが、実際の現場状況(屋内での作業比率や、応援で入った現場など)を詳しく聞き取ることで、要件を満たす事実が見つかることがあります。弁護士は、法律の規定と照らし合わせながら、あなたのキャリアを丁寧に紐解き、受給の可能性を最大限に探ります。

2. 困難な「証拠収集」をプロが代行

給付金の申請には、数十年前の就業歴を証明する公的な資料や、当時の同僚の証言などが必要です。「会社が倒産している」「資料がない」といった場合でも、弁護士は職権による調査や、年金記録の解析、関連団体への照会など、あらゆる手段を尽くして証拠を積み上げます。

3. 医学的判断のサポート

認定の可否を分ける「画像診断」や「検査数値」について、弁護士は協力医と連携して精査します。主治医の診断書だけでは認定要件を満たしているか不明確な場合でも、専門的な意見書を取り付けることで、審査会での認定確率を高めることができます。特に石綿肺や胸膜肥厚の認定には、微妙な画像所見の読影能力が問われます。

4. 給付金以外の救済ルートの検討

建設アスベスト給付金は「国」に対する請求ですが、被害の原因となった建材を製造した「建材メーカー」に対しても、損害賠償を請求できる可能性があります。これは給付金とは別の手続きになりますが、弁護士であれば、両方の手続きを並行して進め、被害者の方が受け取れる補償の総額を最大化するための戦略を立てることができます。

5. 煩雑な手続きからの解放

申請書類の作成や役所とのやり取りは非常に煩雑で、闘病中の方やご高齢のご遺族には大きな負担です。弁護士に依頼することで、これらの手続きを一任でき、精神的なストレスを軽減できます。また、不認定となった場合の審査請求(不服申し立て)についても、法的根拠に基づいた反論を行うことができます。

まとめ

建設アスベスト給付金制度は、被害者の方々が長年の苦しみの末に勝ち取った正当な権利です。しかし、その扉を開くための鍵(要件)は複雑で、多くの方がその鍵をうまく使えずにいます。

今回ご紹介したチェックリストは、あくまで第一歩です。

「昭和47年以前から働いていたから対象外かも」「診断書には違う病名が書かれている」といった場合でも、専門家が詳細に調査すれば、認定の可能性が見えてくることは決して珍しくありません。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、アスベスト被害に遭われた方とそのご家族の救済に全力を注いでいます。過去の資料が手元になくても、記憶が曖昧でも構いません。まずは一度、私たちにご相談ください。

あなたが、そしてご家族が、安心してこれからの人生を歩むためのサポートを、私たちが全力で行います。

アスベスト被害は、時間が経てば経つほど証拠の収集が難しくなります。

「もしかしたら?」と思ったその時が、相談のベストタイミングです。私たちと共に、正当な補償への道を探しましょう。


ご案内

当事務所では、各法律問題に関する動画解説を配信中です。ぜひご視聴ください!

長瀬総合のYouTubeチャンネル

【リーガルメディアTVはこちらから】

当事務所では事務所からのお知らせやセミナーのご案内等を配信するメールマガジンを運営しています。
ご興味がある方は、こちらのご登録もご検討ください!

長瀬総合のメールマガジン

【NS News Letterのご登録はこちら】

© 弁護士法人長瀬総合法律事務所 アスベスト被害専門サイト