コラム

2025/08/30 コラム

石綿肺(アスベストーシス)とは?症状と労災認定基準

【じん肺の一種】石綿肺(アスベストーシス)とは?症状と労災認定基準を弁護士が解説

はじめに

「じん肺」という病名を聞いたことがあるでしょうか。長年にわたり、粉じんの舞う環境で働いてきた方がかかる「職業病」として知られています。そのじん肺の中でも、アスベスト(石綿)の粉じんを大量に吸い込むことによって引き起こされるのが「石綿肺(せきめんはい、アスベストーシス)」です。

石綿肺は、ゆっくりと、しかし確実に肺の機能を蝕んでいく病気です。初期には自覚症状が乏しく、「年のせいだ」と思い込んでいるうちに、気づけば息切れで日常生活に支障をきたすようになっていた、というケースも少なくありません。

もしあなたが、過去にアスベストを扱う職場で働き、「じん肺」や「石綿肺」と診断された、あるいはその疑いを指摘されたのであれば、あなたは労災保険による手厚い補償を受けられる可能性があります。この記事では、石綿肺という病気の内容と、その労災認定基準について解説します。

石綿肺(アスベストーシス)に関するQ&A

Q1. 「じん肺」と「石綿肺」はどう違うのですか?

「じん肺」とは、粉じんを吸い込むことによって肺に線維化(組織が硬くなること)が生じる病気の総称です。その原因となる粉じんの種類によって、様々な名前がつけられています。例えば、鉱山の岩石粉じんが原因なら「けい肺」、炭鉱の石炭粉じんが原因なら「炭肺」と呼びます。そして、アスベスト(石綿)の粉じんが原因で起こるじん肺のことを、特に「石綿肺」と呼ぶのです。つまり、石綿肺は、じん肺という大きな括りの中の一つです。

Q2. 息切れはしますが、年のせいだと思っていました。石綿肺の可能性はありますか?

その可能性は十分に考えられます。石綿肺の最も代表的な初期症状は、坂道や階段を上るなど、体を動かした時の息切れ(労作時呼吸困難)です。これは加齢による体力低下の症状と非常によく似ているため、ご自身では病気だと気づきにくいのが特徴です。過去に、建設業、造船業、石綿製品製造業など、アスベスト粉じんにばく露する可能性のある職場で働いた経験があり、最近特に息切れがひどくなったと感じる方は、一度、呼吸器内科の専門医に相談し、過去の職歴を伝えた上で「じん肺健康診断」を受けることをお勧めします。

Q3. 「じん肺管理区分」という言葉を聞きました。これは何ですか?

「じん肺管理区分」とは、じん肺健康診断の結果に基づき、病気の進行度合いを行政が区分けする制度のことです。胸部X線写真の所見などに応じて、「管理1(じん肺の所見なし)」から「管理4(じん肺がかなり進んでいる)」までの4段階に分けられます。この区分は、労災保険やその他の給付金を受けるための極めて重要な基準となります。例えば、「管理2」以上に決定されると、様々な労災給付の対象となります。勤務先を通じて、またはご自身で都道府県労働局に申請することで、この区分の決定を受けることができます。

【解説1】石綿肺(アスベストーシス)とはどのような病気か

原因とメカニズム

石綿肺は、比較的高濃度のアスベスト粉じんを長期間(一般に10年以上)にわたって吸入し続けることで発症します。肺の奥深くまで到達した無数のアスベスト繊維に対し、体を守ろうとする免疫機能が過剰に反応し、肺の組織(肺胞)に慢性的な炎症が起こります。この炎症が長年続く結果、肺胞の壁が厚く、硬くなり(線維化)、肺がゴムまりのように弾力性を失ってしまうのです。

症状の進行

肺が硬くなると、うまく膨らんだり縮んだりできなくなり、酸素を効率よく取り込む能力が低下していきます。

  • 初期症状
    労作時の息切れ、痰を伴わない乾いた咳(空咳)。
  • 進行期の症状
    安静にしていても息苦しさを感じるようになり、呼吸不全に陥ることもあります。また、指先が太鼓のばちのように丸くなる「ばち指」が見られることもあります。

一度線維化した肺の組織は、残念ながら元の健康な状態に戻ることはありません。治療は、症状の進行を遅らせ、呼吸を楽にするための対症療法が中心となります。

合併症のリスク

石綿肺は、それ自体が呼吸機能を低下させるだけでなく、より深刻な病気を引き起こす「合併症」のリスクを高めます。特に、「肺がん」を合併する確率が高いことが知られています。石綿肺の患者様に発生した肺がんは、アスベストが原因であると推認され、労災認定の対象となります。その他、肺結核や続発性気管支炎なども合併症として定められています。

【解説2】石綿肺の労災認定と補償

石綿肺で補償を受けるためには、まず「じん肺管理区分」の決定を受けることが全ての出発点となります。この区分によって、受けられる補償の内容が大きく変わります。

じん肺管理区分と労災給付

  • 管理2(じん肺の所見あり)
    この段階から労災給付の対象となります。現職の労働者の場合、作業転換のための「転換手当」などが支給されます。
  • 管理3(じん肺が相当進んでいる)
    療養が必要と判断されれば、「療養給付(治療費)」や「休業補償給付」などが受けられます。また、離職後には「じん肺補償年金」などの対象となります。
  • 管理4(じん肺がかなり進み、合併症のおそれあり)
    最も重い区分で、手厚い年金給付(障害補償年金、遺族補償年金など)の対象となります。

建設アスベスト給付金制度

過去に建設業務に従事していた方は、じん肺管理区分に応じて以下の給付金を受け取れる可能性があります。

  • 管理2
    550
    万円(合併症ありの場合 700万円)
  • 管理3
    800
    万円(合併症ありの場合 950万円)
  • 管理4
    1,150
    万円

国に対する損害賠償請求(工場労働者)

アスベスト工場で働いていた方は、国に対して訴訟を提起し和解することで、じん肺管理区分に応じた賠償金を受け取ることができます。

  • 管理2
    550
    万円(合併症ありの場合 700万円)
  • 管理3
    800
    万円(合併症ありの場合 950万円)
  • 管理4
    1,300
    万円

なぜ、弁護士への相談が必要なのか

じん肺管理区分の申請や労災請求は、手続きが専門的で、特に職歴の証明でつまずく方が少なくありません。

  • 正確な職歴の証明をサポート
    何十年も前の職歴を正確に思い出し、証明するのは大変な作業です。弁護士は、年金記録などの公的資料の取り寄せや、元同僚からの証言収集などを通じて、皆様の職歴証明を強力にサポートします。
  • 適切な管理区分の獲得に向けた活動
    提出する診断書や医学的資料の内容が、管理区分の決定に大きく影響します。弁護士は、医療記録を精査し、主治医と連携するなどして、皆様の状態に見合った適切な管理区分が決定されるよう働きかけます。
  • 不利益な決定に対する不服申立て
    万が一、想定より低い管理区分が決定されたり、申請が認められなかったりした場合でも、弁護士は審査請求や行政訴訟などの法的な不服申立て手続きを通じて、決定の取り消しや変更を求めて争います。

まとめ

長年の粉じん作業の末に発症する石綿肺。その息苦しさは、決して「年のせい」ではありません。

  • 石綿肺(アスベストーシス)は、アスベスト粉じんが原因で肺が硬くなる「じん肺」の一種です。
  • 主な症状は息切れや咳で、進行すると呼吸不全に至ることもあり、肺がんを合併するリスクも高まります。
  • 労災補償を受けるには「じん肺管理区分」の決定を受けることが重要で、「管理2」以上が対象となります。
  • 申請には正確な職歴の証明が不可欠であり、専門家である弁護士のサポートが有効です。

もしあなたが、過去の仕事が原因で息苦しさを感じているなら、それは国から正当な補償を受けるべき「業務上疾病」のサインかもしれません。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、石綿肺をはじめとする、じん肺に関するご相談を無料で受け付けております。まずは、あなたの職歴と今の症状をお聞かせください。私たちが、皆様の権利の実現を支援いたします。


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