【弁護士が解説】アスベスト建材のレベル1,2,3とは?危険度と具体例、法規制の違い
はじめに
アスベスト問題を調べていると、「レベル1」「レベル2」といった言葉を目にすることがあります。これは、アスベスト含有建材の危険度を示す、法的に定められた重要な区分です。しかし、この「レベル」が具体的に何を意味し、それぞれにどのような違いがあるのかを正確に理解されている方は少ないかもしれません。
この危険度レベルは、建物の解体・改修工事を行う際の対策の厳重さを左右するだけでなく、過去にどのような環境でばく露したのか、そのリスクの大きさを測る上でも重要な指標となります。
この記事では、アスベスト建材の「レベル1,2,3」の違いを、具体例を交えながら解説します。ご自身やご家族が関わった建材の危険度を知り、適切な対応をとるための一助としてください。
アスベスト建材のレベルに関するQ&A
Q1. レベル3なら、危険性は低く安全なのでしょうか?
「レベル3は安全」という認識は、大きな誤解です。正しくは「通常の状態ではアスベスト繊維が飛散する可能性が“比較的”低い」に過ぎません。レベル3に分類されるスレート屋根材やサイディング外壁材は、セメントなどで固められていますが、解体工事で重機で破壊されたり、ドリルで穴を開けたりすれば、内部に含まれる大量のアスベスト繊維が飛散します。日本の建物の多くにこのレベル3建材が使われており、不適切な工事によって多くの建設作業員が被害を受けてきました。危険性が低いのではなく、あくまで「飛散しにくい」だけ、とご理解ください。
Q2. 建材のレベルは、誰がどのようにして判断するのですか?
建物の解体・改修工事を行う前には、法律に基づき、事業者が必ず「事前調査」を行わなければなりません。この調査は、2023年10月以降、国が定めた専門の資格を持つ者(建築物石綿含有建材調査者など)が行うこととされています。有資格者は、建物の設計図書を確認したり、現地で建材を直接目視したり、必要に応じて建材を採取して分析したりすることで、アスベストの有無と、含まれていた場合のレベルを判断します。
Q3. 自分が扱っていた建材のレベルを知ることは、なぜ重要ですか?
ご自身がばく露したアスベストの危険度を客観的に示す上で、レベルは重要な証拠となります。例えば、労災申請や損害賠償請求の際に、「レベル1の吹付けアスベストの除去作業に従事していた」と証明できれば、極めて高濃度のアスベストにばく露したことが強く推認され、病気との因果関係を主張しやすくなります。また、どのレベルの建材を扱う作業が建設アスベスト給付金の対象になるかなど、利用できる救済制度を判断する上でも、レベルの知識は役立ちます。
解説
危険度が異なる アスベストレベル1,2,3の詳細
アスベスト含有建材は、その「発じん性(粉じんの発生のしやすさ)」の高さに応じて、法律(大気汚染防止法や石綿障害予防規則)で3つのレベルに分類されています。数字が小さいほど発じん性が高く、危険です。
レベル1建材【発じん性が著しく高い】
アスベスト建材の中で、最も危険性が高いと分類されるのがレベル1です。
定義・状態
アスベストが綿のような状態で吹き付けられていたり、非常に脆く密度が低かったりするため、少しの振動や衝撃、劣化によって、極めて大量のアスベスト繊維が空気中に飛散します。
主な具体例
- 吹付けアスベスト(石綿)
鉄骨の耐火被覆材として梁や柱に直接吹き付けられている。 - アスベスト含有吹付けロックウール/ひる石吹付け
吸音・断熱目的で、ビルの機械室や駐車場の天井、体育館の天井などに使用。
使用されていた場所
大規模な鉄骨造のビル、マンション、工場、体育館、講堂、ボイラー室など。
法的な規制
除去作業には最も厳重な措置が求められます。作業場所を外部から完全に隔離する「隔離養生」、集じん・排気装置による「負圧管理」、作業員の「高レベルの呼吸用保護具」の着用、そして都道府県等への「作業計画の届出」などが厳格に義務付けられています。
レベル2建材【発じん性が高い】
レベル1ほどではありませんが、破損しやすく、飛散リスクが高い建材です。
定義・状態
アスベストを紙状や布状に加工し、保温材として配管に巻き付けたり、断熱材として板状に成形したりしたものです。柔らかく、劣化すると崩れやすいため、除去の際に飛散しやすい性質があります。
主な具体例
- アスベスト含有保温材・断熱材・耐火被覆材
配管(パイプ)、ボイラー、ダクト、煙突などに巻き付けられている筒状・ひも状・板状の材料。 - ガスケット・パッキン
配管の接合部や機械の部品に使われるシート状のシール材。
使用されていた場所
工場、プラント、船舶、ビルのボイラー室・機械室、化学工場など。
法的な規制
レベル1に準じた厳重な飛散防止対策と、都道府県等への届出が義務付けられています。
レベル3建材【発じん性が比較的低い】
「非飛散性アスベスト」とも呼ばれますが、これは誤解を招きやすい表現です。あくまで「固形物で、通常時は飛散しにくい」という意味に過ぎません。
定義・状態
セメントや樹脂などの固い材料でアスベストを練り込み、板状などに成形した建材です。硬く、安定しているため、割ったり砕いたりしなければ飛散しません。しかし、解体工事などで破壊されると、内部のアスベストが飛散します。日本の建物の多くで、このレベル3建材が使用されています。
主な具体例
- 屋根材
スレート瓦(コロニアル、カラーベストなど) - 外壁材
窯業系サイディング、石綿セメント板 - 内装材
ケイ酸カルシウム板第一種(壁・天井)、ビニル床タイル(Pタイル)、天井用吸音石膏ボード
使用されていた場所
戸建て住宅、マンション、アパート、店舗、工場、学校など、あらゆる建物の屋根、外壁、内壁、天井、床。
法的な規制
レベル1・2のような届出義務はありません。しかし、作業基準は定められており、原則として手作業で、建材を割らないように取り外す「手ばらし」や、散水等による「湿潤化」が義務付けられています。このルールが守られず、重機で一気に解体される現場が後を絶たないことが問題です。
なぜ、弁護士への相談が必要なのか
アスベスト建材のレベルは、被害の証明と密接に関わっています。アスベスト問題に精通した弁護士は、レベルの違いが持つ法的な意味を理解し、皆様の権利擁護に活かします。
- ばく露状況の悪質性の立証
ご相談者様の職歴から、どのレベルの建材を扱っていた可能性が高いかを分析します。特にレベル1・2の建材を扱う作業では、事業者の安全配慮義務違反が、レベル3の作業に比べてより強く問われる傾向にあります。弁護士は、この点を的確に主張し、交渉や裁判を有利に進めます。 - 不適切な工事の責任追及
レベル3建材の解体において、法律で定められた作業基準(湿潤化など)が守られていなかった事実を証明できれば、それは企業の明確な法律違反・安全配慮義務違反となります。弁護士は、同僚の証言などを基に、不適切な作業実態を明らかにし、企業の責任を追及します。 - 救済制度の的確な利用
建設アスベスト給付金の対象となる作業には、特定のレベルの建材を扱う作業が多く含まれています。弁護士は、ご相談者様がどのレベルの建材を扱っていたかを特定し、給付金をはじめとする最適な救済制度の利用をサポートします。
まとめ
アスベスト建材の危険度は、3つのレベルに分類されていますが、その本質を正しく理解することが重要です。
- レベル1(吹付け材など)
最も危険。除去には厳重な隔離・管理が必要。 - レベル2(保温材など)
危険。レベル1に準じた対策が必要。 - レベル3(成形板など)
安全ではない。 破壊・切断により飛散する。日本の建材の大半を占め、多くの被害の原因となっている。
ご自身が過去に扱った建材、あるいはご自宅に使われている建材の種類やレベルが分からなくても、心配はいりません。建築の年代や職種、作業内容から、ある程度の推測が可能です。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、アスベスト被害に関する無料相談を行っています。 記憶が曖昧でも、資料がなくても大丈夫です。私たち法律の専門家が、皆様のお話から一つひとつ事実を紐解き、解決への道筋を照らします。
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