はじめに
アスベスト(石綿)は、かつて「安価で万能な素材」として建築業や製造業で幅広く用いられてきました。耐熱性・耐久性・断熱性に優れた特性を活かし、住宅やビル、船舶、車両など、実に多彩な分野で使用されていたのです。しかし、その後アスベストの有害性が明らかになり、現在では日本でも原則使用が禁止されています。ただし、既存の建築物や古い製品には今でもアスベストが含まれている可能性があるため、解体や廃棄の際に飛散リスクが懸念されます。
本稿では、アスベストを含有していた代表的な建材や製品の例を挙げながら、注意すべきポイントを解説いたします。もし、ご自宅や職場、あるいは近所に気になる建物や設備がある場合は、専門家に早めに相談し、適切な対処をとることが重要です。アスベストに起因する健康被害や補償手続きでお困りの場合は、弁護士法人長瀬総合法律事務所にお問い合わせください。
Q&A
Q1:どのような建材にアスベストが含まれているのですか?
代表的なものとしては、スレート(屋根材)や吹き付け材(耐火・断熱目的)、石綿セメント板、床タイル、パイプの保温材などが挙げられます。特に昭和中期に建築された建物には広く使用されている可能性があります。
Q2:家庭用製品にもアスベストが含まれていたのですか?
一般家庭向けのストーブやアイロン、調理器具の断熱材としてアスベストが使われていた例があります。また、車のブレーキパッドなどにも使用されていた時期があり、古い自動車を整備する際には注意が必要です。
Q3:アスベスト含有製品を廃棄したいとき、どんな手続きが必要ですか?
アスベストの飛散を防ぐため、特別管理産業廃棄物として扱うことが原則です。許可を受けた廃棄業者に依頼し、防塵マスクの使用や密閉容器での運搬など、法令で定められた方法で処分する必要があります。
Q4:建築物を解体する際、アスベスト含有を調査する義務はあるのでしょうか?
令和3年4月の改正大気汚染防止法などにより、解体や改修工事を行う前にアスベスト含有の有無を事前調査することが義務付けられています。調査結果に応じて飛散防止措置を講じる必要がありますので、専門業者に依頼して正確に判定してもらうことが重要です。
Q5:屋根や壁にアスベストが含まれている建物に住んでいるだけでも危険でしょうか?
アスベストは基本的に繊維が飛散しなければ大きなリスクはありません。建材が劣化・破損していない場合は、直ちに危険というわけではありませんが、改修や解体時には飛散リスクが高まるため、適切な工事手法をとることが重要です。
解説
代表的なアスベスト含有建材
- 吹き付けアスベスト
耐火や保温、防音の目的で天井や柱に吹き付けられたアスベスト。建築物の天井裏や柱の表面に厚く吹き付けられている場合があります。飛散しやすい状態のため、特に注意が必要です。 - スレート屋根材
セメントとアスベストを混合して薄い板状に加工した屋根材で、トタン屋根よりも軽量かつ耐久性に優れているとされ、広く普及しました。古くなるとヒビや欠けが生じ、アスベストの粉じんが飛散する恐れがあります。 - 石綿セメント板(いしつつばん)
外壁や内壁、軒天などに使用され、強度と耐火性に優れた建材として広く使われていました。見た目は普通のセメント板と似ているため、素人判断ではアスベスト含有の有無を判別しづらい場合があります。 - パイプの保温材・耐火被覆材
配管やボイラー周りの断熱・保温目的で使用されたものです。劣化や破損によってアスベスト繊維が露出し、飛散するリスクがあります。
家庭用製品や自動車部品での使用例
- 家庭用ストーブ・アイロン
断熱材としてアスベストが使われていたものがあります。古い製品を分解する際には飛散リスクがあるため要注意。 - 自動車のブレーキパッド・クラッチ
大きな摩擦熱が生じる部分にアスベストが使われていた時期がありました。現在はアスベストフリーの製品が主流ですが、古い車両を修理・メンテナンスする場合は注意が必要です。
アスベスト含有の判定方法と注意点
アスベスト含有の建材や製品を素人が目視で見分けることは困難です。正確に判断するには、専門業者がサンプリングを行い、顕微鏡で繊維の形状や種類を分析する必要があります。仮にアスベスト含有が疑われる場合は、自己判断で削ったり取り外したりせず、専門家に相談したうえで安全対策を徹底してください。
除去・封じ込め作業の実際
アスベストを除去するには、作業区域を密閉したうえで負圧に保ち、粉じんが外部へ漏れないようにします。作業員は防塵マスクや保護服を着用し、慎重に建材を取り扱い、集塵機などで繊維を吸い込みながら切断・撤去を行います。飛散を最小限に抑えるため、水を噴霧しながらの作業も一般的です。除去が難しい場合は、アスベストが外部に露出しないように封じ込めや囲い込みを行う方法もあります。
弁護士に相談するメリット
アスベスト被害に対する法的手段の整理
アスベスト含有建材・製品による健康被害が疑われる場合、労災保険や石綿健康被害救済制度をはじめ、さまざまな救済手段を検討する必要があります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、被害者の方の事情を丁寧にヒアリングし、最も適切な制度利用や損害賠償請求の可能性をアドバイスします。
過去の記録や証拠収集のサポート
健康被害の原因が特定の建材や製品にあることを立証するには、建築当時の図面や製品の品番、工事記録など、細かな証拠が必要となる場合があります。弁護士に依頼すれば、こうした資料の収集や整理をサポートし、必要に応じて専門家の協力を得ながら被害の因果関係を明らかにしていくことが期待できます。
行政や企業との交渉・訴訟対応
アスベスト被害をめぐっては、建材メーカーや施工業者、行政を相手に損害賠償請求を行うケースもあります。弁護士は法的知識を駆使して、証拠や判例をもとに交渉を進め、被害者の方が正当な補償を受けられるよう力を尽くします。また、裁判に至った場合も代理人として訴訟手続きを対応し、依頼者の負担を軽減します。
まとめ
アスベストが含まれる建材や製品は、昭和中期以降に大量に出回っていたため、現代においても建物の解体や設備の廃棄時に大きな問題となっています。アスベスト繊維を誤って吸い込むと、数十年後に中皮腫や肺がんなど深刻な疾患を発症するリスクがあるため、適切な調査と安全対策が不可欠です。
万が一、アスベスト含有建材や製品により健康被害を受けた、またはその疑いがある場合は、医療機関での検査をはじめ、補償や救済制度の活用を検討する必要があります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、こうした手続きのサポートや、企業・行政に対する交渉・訴訟に関するアドバイスを行います。困ったときは、一人で悩まずに早めにご相談いただければ幸いです。
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