コラム

2025/02/15 コラム

アスベストが引き起こす主な健康被害

はじめに

アスベスト(石綿)は、かつて建材や工業製品を中心に幅広く使われてきた鉱物繊維です。耐熱性や耐久性に優れた反面、繊維を吸い込むことで深刻な健康被害を引き起こすことが明らかになり、現在では国内での使用は原則禁止となっています。しかし、過去にアスベストを使った建物や製品が数多く存在し、解体作業や劣化の進行などにより今なお健康被害のリスクが続いているのが実情です。

本稿では、アスベストが引き起こす主な健康被害について、よりわかりやすく解説いたします。肺がんや中皮腫といった重篤な疾患のほか、さまざまな呼吸器系の合併症にも注意が必要です。自分あるいは身近な方の健康被害がアスベストによるものではないかと疑われる場合には、一刻も早く専門医を受診し、必要に応じて弁護士への相談を検討してください。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、アスベストに関する法律相談や補償手続きのサポートを行っております。

Q&A

Q1:アスベストを吸い込むと、どのような病気にかかる可能性がありますか?

最も代表的なものは、中皮腫や肺がんなどの悪性疾患ですが、肺自体が線維化してしまう「肺線維症(アスベスト肺)」など、さまざまな呼吸器系の病気のリスクが高まります。症状が出るまでに数十年の潜伏期間を要することも珍しくありません。

Q2:なぜアスベストによる健康被害は時間が経ってから現れるのですか?

アスベスト繊維は非常に細く、肺や胸膜、腹膜などに入り込みやすい一方で、身体がそれを排除しきれません。その結果、長期にわたり細胞を刺激し続け、数十年後にがんを発症するケースが多いとされています。

Q3:アスベストを吸い込んだかもしれないとき、どのタイミングで検査を受けるべきですか?

思い当たる暴露歴がある場合は、なるべく早めに医療機関を受診し、胸部レントゲンやCT、呼吸機能検査などを受けるとよいでしょう。アスベストによる疾患は早期発見・早期治療が望ましいものの、実際には発症まで潜伏期間が長いため、定期的な検査が重要です。

Q4:アスベスト関連疾患は労災保険などの対象になりますか?

仕事でアスベストに暴露した結果として発症した場合は、労災保険の給付の対象となる可能性があります。また、職業暴露以外でも、石綿健康被害救済制度などの公的支援制度を利用できるケースがあります。詳しくは、法律事務所などへご相談ください。

Q5:近所に古い工場や建物があり、アスベスト被害が心配です。どのように対策すればいいですか?

まずは行政や専門業者に相談し、空気中のアスベスト濃度を測定してもらうなど、客観的なデータを得ることが重要です。問題が発覚した場合は、適切な除去作業や封じ込め作業を行ってもらい、飛散防止措置を徹底する必要があります。

解説

アスベストが引き起こす主な疾患

  1. 中皮腫
    肺を包む胸膜、腹膜、心膜などの表面を覆う「中皮細胞」に発生する悪性腫瘍です。発症までに2040年、あるいはそれ以上の潜伏期間を要することがあります。胸水貯留や胸痛、呼吸困難などの症状が出ますが、早期発見が難しいのが特徴です。
  2. 肺がん
    アスベストによる肺がんは喫煙も含め、複合的な要因が重なることでリスクが高まります。咳や血痰、胸痛、体重減少などの症状がみられますが、初期には自覚症状がほとんどない場合があります。
  3. アスベスト肺(石綿肺)
    アスベストを長期間吸い込むことで、肺に繊維化(線維組織が増殖する現象)が生じ、呼吸機能が低下する病気です。徐々に息切れや乾いた咳といった症状が進行し、重症化すると日常生活にも支障をきたします。
  4. 胸膜プラーク・胸膜肥厚
    肺を覆う胸膜が肥厚または石灰化し、胸膜プラークと呼ばれる病変を形成することがあります。多くの場合、症状がほとんどないものの、胸部画像診断などで発見されるケースもあり、アスベスト暴露の重要な所見として扱われます。

アスベスト暴露と病気の関係性

アスベストによる健康被害は、一度の大量暴露というよりは、長期間にわたる低濃度の暴露でも発症しうる点が大きな特徴です。作業現場では防塵マスクの着用や換気システムの設置が不十分だった時代もあり、多くの方が知らず知らずのうちにアスベストを吸い込んだ可能性があります。

また、家族への「二次暴露」にも注意が必要です。作業服や髪の毛などに付着したアスベスト繊維が、家庭内に持ち込まれることで配偶者や子どもなどが健康被害を受ける事例も確認されています。

発症リスクと症状

アスベスト関連疾患の発症リスクは、「どの程度・どれくらいの期間、アスベストにさらされたか」によって大きく左右されます。発症するまでの潜伏期間が非常に長いため、暴露から数十年を経た頃に中皮腫や肺がんが見つかるケースも珍しくありません。早期発見が難しい反面、少しでも思い当たる節があれば、定期的な健康診断を受けることで早期治療や進行抑制の可能性を探ることが重要です。

医療機関と相談窓口

アスベストによる疾患が疑われる場合は、呼吸器内科や胸部外科などの専門医療機関を受診しましょう。労災認定や公的救済制度の活用にあたっては、診断書や意見書などの書類が必要となることが多いため、弁護士や労働基準監督署などに早めに相談し、手続きを整理することをおすすめします。

弁護士に相談するメリット

適切な補償手続きを進めるための支援

アスベスト関連疾患は労災保険や石綿健康被害救済制度など、さまざまな救済手段を活用できる場合があります。しかし、どの制度が利用できるかの判断や書類作成には専門的な知識が必要です。弁護士法人長瀬総合法律事務所は、必要書類の準備や手続き全般をサポートし、適切な補償を受けられるようバックアップします。

損害賠償請求における交渉力

企業や行政機関に対する損害賠償請求を行う場合、弁護士が代理人となって交渉や訴訟を進めることで、請求者ご本人の負担が軽減され、より有利な条件での和解や判決が得られる可能性が高まります。弁護士は法律的視点から交渉を行うため、感情的な対立を避け、論点を整理して主張立証を行うことができます。

個別事情に応じた最適解の提示

アスベスト被害は、職業暴露や二次暴露、近隣の環境要因など、事情が多岐にわたります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、これまでの実務経験を活かして依頼者それぞれの状況に合わせた最適解を提案します。費用面での不安にも丁寧に対応し、相談しやすい体制を整えております。

まとめ

アスベストが引き起こす健康被害は極めて深刻で、中皮腫や肺がんなどの重篤な疾患へとつながるリスクがあります。発症には長い潜伏期間があるため、過去にアスベストを扱う職場で働いていた、あるいは建材の解体現場に近い場所で生活していたなど、わずかでも心当たりがある場合は、早めの検査と情報収集をおすすめします。

また、アスベストによる健康被害が疑われる方や、すでに医療機関でアスベスト関連疾患を指摘された方は、補償や救済制度の利用など、法的手段を含めた対応を検討することが重要です。複数の制度が用意されていますが、手続きの煩雑さや書類の不備によって、十分な補償を受けられないケースもあります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、こうした制度の活用や損害賠償請求をサポートいたします。


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