コラム

2025/09/01 コラム

良性石綿胸水とは?症状と見舞金の対象になるケース

【良性でも補償対象】良性石綿胸水とは?症状と受けられる補償を弁護士が解説

はじめに

「胸に水がたまる」という症状で病院を受診し、検査の結果、「良性石綿胸水(りょうせいせきめんきょうすい)」と診断された方へ。

「良性」という言葉に安堵する一方で、「石綿」という言葉に、過去のアスベスト(石綿)との関わりを思い出し、不安を感じているかもしれません。また、「良性なのだから、補償などは関係ないだろう」と思い込んでしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

それは大きな誤解です。良性石綿胸水は、その名の通り悪性(がん)ではありませんが、アスベストばく露によって引き起こされる、れっきとした病気の一つです。そのため、この病気によって受けた身体的・経済的な損害に対して、公的な補償を受ける権利があります。

この記事では、「良性石綿胸水」という病気の内容や症状、そして「良性」であっても受け取れる補償について解説していきます。

良性石綿胸水に関するQ&A

Q1. 「良性」と名前がついていますが、本当にアスベストが原因の病気なのですか?

はい、その通りです。良性石綿胸水は、アスベスト繊維が胸膜(肺を覆う膜)を刺激し、急性の炎症を起こすことで、胸膜と肺の間に「胸水」と呼ばれる体液が溜まってしまう病気です。がん細胞は見られないため「良性」と呼ばれますが、その引き金はアスベストばく露にあります。したがって、アスベスト関連疾患として、各種救済制度の対象とされています 9

Q2. 症状は、胸水を抜いたら治まりました。それでも補償の対象になりますか?

はい、対象となる可能性があります。良性石綿胸水は、一度きりで治まることもあれば、再発を繰り返すこともあります。たとえ症状が一時的なものであっても、その診断と治療のために医療機関を受診し、費用や休業などの負担が生じた事実は変わりません。その期間の治療費や、一定の要件を満たせば、建設アスベスト給付金制度における給付金の対象となる可能性があります。過去に診断された方も、諦めずにご相談ください。

Q3. 診断には、どのような検査が必要ですか?

良性石綿胸水の診断で最も重要なのは、「他の病気の可能性を否定すること」です。胸水がたまる原因には、肺がんや悪性中皮腫、結核、心不全など、様々な病気が考えられます。そのため、胸部X線やCT検査に加え、溜まった胸水を注射器で抜いてその成分を調べる「胸水穿刺(きょうすいせんし)」や、胸腔鏡を使って胸膜の組織を採取する検査(生検)などを行い、がん細胞や細菌などがいないことを確認した上で、総合的に診断が下されます。これを「除外診断」と呼びます。

【解説1】良性石綿胸水とはどのような病気か

原因と潜伏期間

吸い込まれたアスベスト繊維が胸膜に達して炎症を引き起こし、その結果として胸水が滲み出てくるのが原因です。潜伏期間は、他のアスベスト関連疾患に比べてばらつきが大きく、比較的短い場合もあれば、40年以上経ってから発症することもあります。

症状

溜まった胸水が肺を圧迫することで、様々な症状が現れます。

  • 胸の痛み
    特に深呼吸や咳をした時に強くなることが多い。
  • 呼吸困難・息切れ
    溜まっている胸水の量によります。
  • 発熱
  • 乾いた咳(空咳)

これらの症状は、急に現れることもあります。

診断のポイント

前述の通り、良性石綿胸水の診断は「除外診断」によって行われます。

  1. 胸水が溜まっていることを画像検査で確認する。
  2. アスベストばく露歴があることを確認する。
  3. 胸水検査や組織検査で、がんや結核など、他の原因が見当たらないことを証明する。

この3つの条件が揃ったときに、良性石綿胸水と診断されます。つまり、診断のためには、医師に過去のアスベストばく露歴を正確に伝えることが重要になります。

【解説2】良性石綿胸水で受けられる補償

「良性」という言葉から、補償とは無縁だと思われがちですが、そんなことはありません。利用できる制度と給付内容を正しく理解しましょう。

労働者災害補償保険(労災保険)

仕事が原因で発症した場合、労災保険の対象となります。

主な給付内容

  • 療養(補償)給付
    診断や治療(胸水穿刺など)にかかった医療費の全額。
  • 休業(補償)給付
    治療のために仕事を休んだ期間の収入補償。

良性石綿胸水は、後遺障害を残すことが少ないため、障害(補償)給付の対象となることは稀ですが、治療期間中の補償はしっかりと受けることができます。

石綿健康被害救済法

労災の対象とならない方が利用できる制度です。

主な給付内容

  • 医療費・療養手当
    労災保険とほぼ同様に、治療費の自己負担分や、療養中の生活手当(月額約10.4万円)が支給されます。
  • 万が一、この病気が原因で亡くなられたと認定された場合には、特別遺族弔慰金・特別葬祭料(合計2,999,000円)の対象となります。

建設アスベスト給付金制度

過去に建設現場で働いていた方が対象の制度です。良性石綿胸水も、給付金の対象疾患とされています。

給付金額

良性石綿胸水と診断され、一定の要件を満たす場合、1,150万円の給付金が受けられます。

国や企業に対する損害賠償請求

良性石綿胸水も、国が規制を怠ったことや企業が安全配慮義務を怠ったことによって生じた「損害」であるため、慰謝料などを請求する対象となり得ます。国の和解手続きにおいても、対象疾患として認められています。 

なぜ、弁護士への相談が必要なのか

良性石綿胸水の補償請求は、その特殊性から、専門家である弁護士のサポートが効果的です。

  • 診断の確定と証拠化をサポート
    「除外診断」というプロセスを正しく理解し、主治医に必要な検査を依頼したり、診断書に記載してもらうべき事項を的確に伝えたりすることで、診断の確定と、それを補償申請の場で証明するための証拠化をサポートします。
  • 見過ごされがちな権利の掘り起こし
    「良性だから」と諦めていた方や、過去に診断されたものの、そのままにしてしまっている方に対し、補償を受けられる可能性を的確にお伝えし、埋もれてしまった権利を掘り起こします。特に、建設アスベスト給付金はご存じない方が多く、弁護士が介入することで初めて請求に至るケースが少なくありません。
  • 他の疾患との関連性の検討
    良性石綿胸水を発症した方は、将来的に、悪性中皮腫や肺がん、石綿肺といった、より重篤なアスベスト関連疾患を発症するリスクが他の方より高いと考えられています。弁護士は、今回の請求だけでなく、将来的なリスクも見据え、長期的な視点で皆様をサポートします。

まとめ

「良性」という言葉に、重要な権利を見失わないでください。

  • 良性石綿胸水は、がんではないものの、アスベストが原因で胸に水がたまる、れっきとした補償対象の病気です。
  • 仕事が原因であれば労災保険、そうでなければ石綿健康被害救済法で、治療費などの補償が受けられます。
  • 建設作業に従事していた方は、1,150万円の給付金が受けられる可能性があります。
  • 診断には、他の病気の可能性をすべて否定する必要があり、医師への正確な情報提供が不可欠です。

もし、良性石綿胸水と診断された、あるいはその疑いを指摘された経験がある方は、補償の権利を諦める必要はありません。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、良性石綿胸水に関するご相談も無料で受け付けております。「こんなケースでも対象になるの?」といったご質問だけでも構いません。ぜひ一度、私たちにご連絡ください。


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