【悪性中皮腫と診断された方へ】症状・原因と受けられる補償のすべてを弁護士が解説
はじめに
「悪性中皮腫(あくせいちゅうひしゅ)」
この病名を医師から告げられたとき、ご本人様はもちろん、ご家族様も、計り知れない衝撃と不安に襲われたことと存じます。先の見えない闘病生活や、治療にかかる経済的な負担など、様々な悩みが頭をよぎっているかもしれません。
しかし、どうか知ってください。悪性中皮腫は、その原因が「アスベスト(石綿)」のばく露であることが医学的にほぼ特定されている病気です。これは、皆様が過去の労働や生活環境によって被害を受けた「公害病・職業病」であり、決してご自身のせいではありません。
だからこそ、この病気と診断された方には、国や企業から手厚い補償を受ける正当な権利があります。この記事では、悪性中皮腫という病気の基礎知識から、皆様が利用できる公的な救済制度、そして受け取れる補償について、法的正確性を期して分かりやすく解説します。
悪性中皮腫に関するQ&A
Q1. 悪性中皮腫と診断されました。アスベストを吸った記憶がないのですが…
ご安心ください。アスベストを吸った明確な記憶がなくても、悪性中皮腫と診断されたという事実自体が、アスベストばく露の最も強力な医学的証拠となります。悪性中皮腫の患者様の90%以上は、アスベストばく露が原因であると医学的に考えられています。潜伏期間が20年から50年と非常に長いため、ご本人が忘れてしまった若い頃の短期間の労働や、気づかないうちの家庭内・近隣でのばく露が原因であるケースがほとんどです。ばく露歴が不明でも補償の対象となりますので、決して諦めないでください。
Q2. 治療には高額な費用がかかると聞きました。経済的な負担が心配です。
悪性中皮腫の治療にかかる経済的な不安は、公的な救済制度を利用することで大幅に軽減できます。例えば、仕事が原因で発症したと認められれば「労災保険」が適用され、治療費の自己負担は実質的になくなります。労災の対象外の方でも「石綿健康被害救済法」を利用すれば同様に医療費の自己負担がなくなります。さらに、治療のための休業や生活の支えとなる手当も支給されます。高額な治療を、経済的な心配なく受けるための制度が用意されています。
Q3. 受けられる補償がたくさんあるようですが、まず何をすればよいのでしょうか?
最善の第一歩は、アスベスト問題に精通した弁護士に相談することです。悪性中皮腫の被害者が利用できる制度は、労災保険、石綿健康被害救済法、建設アスベスト給付金、国や企業への損害賠償請求など多岐にわたります。これらの制度は単なる選択肢ではなく、ご自身の状況によって最適な組み合わせや申請の順序が存在します。どの制度を、どの順番で利用するのがご本人にとって最も有利なのかを判断するには、専門的な知識が不可欠です。当事務所のような専門家にご相談いただければ、皆様の状況に合わせた最適な救済プランをご提案し、複雑な手続きをすべて代行いたします。
【解説1】悪性中皮腫とはどのような病気か
原因と潜伏期間
悪性中皮腫は、肺を覆う「胸膜」、腹部の臓器を覆う「腹膜」、心臓を覆う「心膜」などを覆っている「中皮細胞」から発生する、悪性度の高いがんです。その原因は、アスベスト繊維の吸入がほぼすべてであると特定されています。吸い込まれたアスベスト繊維が、長い年月をかけて中皮細胞を傷つけ、がん化させると考えられています。
潜伏期間は20年~50年と非常に長く、平均して40年前後です。
症状
発生部位によって症状は異なります。
- 胸膜中皮腫(最も多い)
初期には症状が出にくいですが、進行すると息切れ、胸や背中の痛み、頑固な咳、体重減少、食欲不振などが現れます。胸に水(胸水)がたまることで、呼吸が苦しくなるのが特徴的です。 - 腹膜中皮腫
腹部の膨満感(お腹が張る)、腹痛、食欲不振、吐き気、便秘や下痢、腹水がたまることによる体重増加などがみられます。
治療法
治療は、がんの進行度(ステージ)、発生部位、患者様の全身状態などを考慮して、複数の治療法を組み合わせて行われます。
- 外科手術
がん組織を切除する治療。 - 放射線治療
高エネルギーの放射線を照射し、がん細胞を破壊する治療。 - 化学療法(抗がん剤治療)
点滴や内服で、全身のがん細胞を攻撃する治療。 - 免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)
体が本来持つ免疫の力を利用して、がん細胞への攻撃力を高める新しい治療法。
どの治療法を選択するかについては、主治医と十分に話し合うことが大切です。
【解説2】悪性中皮腫で利用できる4つの救済制度と補償額
悪性中皮腫と診断された方は、その背景に応じて、以下のような手厚い補償を受ける権利があります。これらは単に並列するものではなく、戦略的に組み合わせて利用することで、補償の最大化を図ることが可能です。
制度名 |
対象者 |
主な給付内容 |
申請先 |
目的・特徴 |
---|---|---|---|---|
① 労働者災害補償保険(労災保険) |
業務が原因でアスベストにばく露した労働者 |
治療費、休業補償、障害年金・一時金、遺族年金・一時金 |
労働基準監督署 |
治療と生活の継続的保障。最も手厚い。 |
② 石綿健康被害救済法 |
労災対象外の方(自営業者、主婦、ばく露源不明者など) |
治療費、療養手当(月額約10.4万円)、遺族への弔慰金等 |
環境再生保全機構 |
労災の隙間を埋めるセーフティネット。 |
③ 建設アスベスト給付金制度 |
過去に建設業務に従事した労働者・一人親方など |
疾病に応じた給付金(中皮腫は最高1,300万円) |
厚生労働省 |
迅速な金銭的救済。労災等との併用も可能。 |
④ 国・企業への損害賠償請求 |
すべての被害者(国の規制不備や企業の安全配慮義務違反が問える場合) |
慰謝料、逸失利益など(上記制度では補填されない損害) |
裁判所 |
精神的苦痛に対する賠償。完全な被害回復を目指す。 |
① 労働者災害補償保険(労災保険)
過去の仕事(業務)が原因でアスベストにばく露し、悪性中皮腫を発症した方が対象です。最も手厚い補償が受けられます 2。
- 療養(補償)給付
治療費の全額(自己負担なし)。 - 休業(補償)給付
療養のために働けない期間の収入を補償。 - 遺族(補償)等給付
患者様が亡くなられた場合、ご遺族に年金または一時金が支給されます。 - 葬祭料(葬祭給付)
葬儀費用。
② 石綿健康被害救済法
労災保険の対象とならない方(例:自営業者、専業主婦、ばく露源が不明な方など)を救済するための法律です。
- 医療費
治療費の自己負担分が支給されます。 - 療養手当
生活費の補助として月額103,870円。 - 特別遺族弔慰金・特別葬祭料
患者様が亡くなられた場合、ご遺族に合計で2,999,000円(弔慰金2,800,000円+葬祭料199,000円)が支給されます。
③ 建設アスベスト給付金制度
過去に建設現場で働き、アスベストにばく露して悪性中皮腫を発症した方が対象です。国から直接、給付金が支払われます。
- 給付金額
- 悪性中皮腫の場合、ご存命であれば1,150万円が支給されます。
- 患者様が亡くなられている場合、ご遺族が請求でき、1,300万円が支給されます。
- なお、労災保険の遺族補償給付を受ける権利が時効(死亡の翌日から5年)で消滅したご遺族を対象とする「特別遺族給付金」(一時金1,200万円)という別の制度があり、建設アスベスト給付金とは区別される必要があります 。
④ 国や企業に対する損害賠償請求(裁判)
上記の公的補償は、主に治療費や逸失利益を補填するものですが、病気になったこと自体の精神的苦痛に対する「慰謝料」は含まれていません。この慰謝料などを、安全配慮義務を怠った企業や、規制を怠った国に対して、裁判(または交渉)を通じて請求することができます。
- 賠償金額の目安
- 国との訴訟上の和解
工場労働者や建設従事者の場合、悪性中皮腫の和解金額は最高1,300万円と定められています。これは、建設アスベスト給付金とは別に請求できるものです。 - 企業からの賠償金
企業の責任の度合いや被害の状況によりますが、数千万円単位になるケースも少なくありません。
- 国との訴訟上の和解
なぜ、弁護士への相談が必要なのか
悪性中皮腫と診断されたら、一刻も早く弁護士に相談することをお勧めします。その理由は以下の通りです。
- 最適な救済プランの設計と実行
上記4つの制度は非常に複雑で、どれをどの順番で利用すべきか、ご自身で判断するのは困難です。弁護士は、皆様の状況を的確に分析し、最も多くの補償を受けられるよう、最適な請求プランを設計し、実行します。 - 慰謝料を含めた金銭的補償の最大化
公的給付だけでは、被害のすべてが回復されるわけではありません。弁護士は、裁判という手段を用いて、皆様が受けた精神的苦痛に対する正当な慰謝料を国や企業に請求し、金銭的な補償の最大化を目指します。 - ご本人・ご家族の負担の一切を代行
闘病というただでさえ大変な状況の中で、複雑な書類を集めたり、行政機関とやり取りしたりするのは、心身ともに大きな負担です。弁護士にご依頼いただければ、これらの手続きをすべて代行しますので、皆様は安心して治療に専念いただけます。
まとめ
悪性中皮腫という病名は、重い現実を突きつけます。しかし、それは同時に、皆様が法的に手厚く救済されるべき被害者であることを示しています。
- 悪性中皮腫は、アスベストばく露が原因の、救済されるべき病気です。
- 治療費の心配をなくす「労災保険」や「石綿健康被害救済法」があります。
- まとまった一時金が受け取れる「建設アスベスト給付金」や「損害賠償請求」の道も開かれています。
- これらの制度を最大限に活用するには、専門家である弁護士のサポートが有効です。
悪性中皮腫と診断されたら、どうか一人で、またご家族だけで抱え込まないでください。あなたの権利を実現するために、私たちがいます。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、悪性中皮腫と診断された方、そのご家族からのご相談を、無料で、全国から受け付けております。まずは、お電話ください。それが、解決への大きな一歩となります。
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