コラム

2025/08/20 コラム

解体工事とアスベスト飛散のリスク|近隣住民が知っておくべきこと

【近隣の解体工事】アスベスト飛散リスクと住民が知るべき対処法を弁護士が解説

はじめに

ご自宅の近所で、古いビルの解体工事が始まった。連日、大きな音や振動、そして舞い上がる粉じん

「この粉じんの中に、アスベストが混じっているのではないか?」
「洗濯物や子供への影響が心配

このような不安を感じたことはありませんか?かつて大量に使用されたアスベストは、今、老朽化した建物の解体ラッシュを迎え、新たな飛散リスクとして私たちの生活に迫っています。

アスベスト飛散防止対策は、法律で事業者に厳しく義務付けられています。そして、近隣住民である私たちには、その対策が適切に行われているかを知り、必要であれば声を上げる権利があります。

この記事では、解体工事に伴うアスベスト飛散のリスクと、近隣住民として知っておくべき法律上のルール、そして具体的な対処法について解説します。

解体工事とアスベストに関するQ&A

Q1. 工事現場の周りがシートで覆われていれば、対策は万全で安心ですか?

養生シートで作業場所を隔離することは、飛散防止の基本であり重要な対策です。しかし、それだけで万全とは言い切れません。アスベストの危険度(レベル)に応じて、作業場の内部を負圧(外部より気圧を低い状態)に保つための集じん・排気装置の設置や、建材を水や薬剤で湿らせて粉じんの発生を抑える「湿潤化」といった措置が義務付けられています。外から見えるシートだけでなく、中でどのような作業が行われているかが重要です。不適切な工事では、シートの隙間などから汚染された空気が漏れ出す危険性もあります。

Q2. 工事現場の看板に、アスベストのことが何も書かれていません。違法ではないですか?

はい、その可能性があります。現在の法律(大気汚染防止法、石綿障害予防規則)では、事業者は解体する建材にアスベストが含まれているか否かを事前に調査し、その調査結果(アスベストの有無)を、工事現場の見やすい場所に掲示することが義務付けられています。 もし、アスベストに関する記載が一切ない看板しか設置されていない場合、事業者がこの掲示義務を怠っているか、そもそも事前調査自体を行っていない可能性も考えられます。これは看過できない問題です。

Q3. 工事のせいで咳が止まらなくなりました。業者に何か請求できますか?

工事の粉じんが原因で健康被害(気管支炎など)が発生し、その工事が適切な飛散防止措置を怠っていた(安全配慮義務違反)ことが証明できれば、施工業者や発注者に対して治療費や慰謝料などの損害賠償を請求できる可能性があります。ただし、健康被害と工事との因果関係を法的に証明するには、医師の診断書や、工事の状況を示す写真・動画、業者とのやり取りの記録など、客観的な証拠が重要になります。泣き寝入りせず、まずは証拠を保全し、弁護士にご相談ください。

解説

解体工事と住民が知っておくべき法的ルール

なぜ解体工事でアスベストが飛散するのか。それは、壁や天井、屋根などに固められていたアスベスト含有建材を、重機で破壊したり、切断したりすることで、内部に封じ込められていた無数の繊維が空気中に放出されるからです。これを防ぐため、法律は事業者に厳しい義務を課しています。

事業者の義務(1):アスベストの「事前調査」と「結果の掲示」

事業者は、解体・改修工事を行う前に、対象の建物にアスベスト含有建材が使用されているかどうかを調査しなければなりません。 そして、その調査結果の概要を、工事期間中、現場の見やすい場所に掲示することが義務付けられています。

【住民のチェックポイント】

工事現場の看板(掲示板)に、以下の項目が記載されているか確認しましょう。

  • 「石綿(アスベスト)事前調査結果」といった表題
  • アスベストの有無(「有り」か「無し」か)
  • 「有り」の場合、どの建材に、どのレベルのアスベストが使われているか

この掲示は、住民がリスクを知るための第一歩です。

事業者の義務(2):都道府県への「届出」

事業者は、レベル1(吹付け材など)やレベル2(保温材など)のアスベストを除去する場合、作業開始の14日前までに、都道府県や市などの自治体へ「特定粉じん排出等作業実施届出書」を提出しなければなりません。

この届出書には、工事の場所、期間、アスベストの種類、飛散防止対策の方法などが詳しく記載されています。

【住民のチェックポイント】

自治体のウェブサイトで届出情報が公開されている場合があります。また、情報公開条例に基づき、届出書の開示を請求することも可能です。

事業者の義務(3):レベルに応じた「飛散防止対策」の実施

アスベストの危険度(レベル13)に応じて、法律で定められた作業基準を守らなければなりません。

  • レベル12の場合
    作業場所を完全に隔離し、集じん・排気装置で内部を負圧に保つ。作業員は専用の保護具を着用する。建材を湿潤化する、などの厳重な措置が必要です。
  • レベル3の場合
    原則として建材を破砕・切断せず、手作業で丁寧に取り外す。やむを得ず切断等する場合は、十分に湿潤化し、粉じんの飛散を抑制する。

【住民のチェックポイント】

レベル12の工事で隔離や負圧管理がされていなかったり、レベル3の工事で散水もせずに建材をバリバリと破壊していたりするのを見かけたら、それは法律違反の可能性があります。

近隣住民が具体的にできること

近隣の解体工事に不安を感じたら、泣き寝入りすることはありません。以下のステップで行動しましょう。

ステップ1:情報収集と記録

まずは冷静に情報を集めます。現場の掲示板をスマートフォンなどで撮影しておきましょう。工事の様子(粉じんの飛散状況、養生の有無など)も、日付がわかるように写真や動画で記録しておくことが、後の証拠として役立ちます。

ステップ2:事業者への問い合わせ

掲示がない、内容が不十分など、疑問な点があれば、まずは現場の責任者や施工会社の窓口に直接問い合わせてみましょう。誠実な事業者であれば、説明に応じるはずです。

ステップ3:行政への相談・通報

事業者が説明に応じない、明らかに不適切な工事が行われているといった場合は、公的機関に相談・通報することもご検討ください。

相談窓口

  • 工事が行われている市区町村の環境保全担当課など
  • 都道府県の大気環境担当課など
  • 労働基準監督署(作業員の安全が確保されていない場合) 

なぜ、弁護士への相談が必要なのか

住民個人で事業者や行政と渡り合うのは、精神的にも時間的にも大きな負担です。弁護士は、皆様の代理人として、法的観点から問題解決をサポートします。

  1. 事業者・行政との代理交渉
    住民の皆様に代わって、弁護士が施工業者や発注者、行政機関に対し、工事の問題点を法的に指摘し、改善を求めたり、情報開示を請求したりします。弁護士が介入することで、相手方も真摯に対応せざるを得なくなるケースが多くあります。
  2. 損害賠償請求の可能性を検討・実行
    不適切な工事により、実際に健康被害が生じたり、家屋が粉じんで汚染されたりした場合、弁護士は損害賠償請求(民事訴訟)に向けて、証拠の収集から訴訟手続きまで一貫してサポートします。
  3. 将来の健康被害への備え
    現時点では症状がなくても、アスベストは長い潜伏期間を経て発症します。不適切な工事があった場合、工事の状況や業者とのやり取りを証拠として保全しておくことは、将来ご自身やご家族の健康に問題が生じた際に、極めて重要となります。弁護士はそのための具体的なアドバイスを提供します。

まとめ

安全であるべき自宅の周辺で、アスベストが飛散するかもしれないという事態は、決して看過できません。

  • 解体工事の前には、事業者によるアスベストの事前調査と結果の掲示が義務付けられています。
  • アスベストのレベルに応じた厳格な飛散防止対策が法律で定められています。
  • 近隣住民には、工事の状況を確認し、疑問があれば声を上げる権利があります。
  • 不適切な工事を見つけたら、記録を取り、行政や労働基準監督署に通報しましょう。

大切なのは、不安を一人で抱え込まず、正しい知識を持って行動することです。お住まいの地域の環境とご家族の健康を守るために、おかしいと感じたら、まずは一歩を踏み出す勇気が大切です。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、アスベスト問題に関するご相談に無料で対応しております。 近隣の工事に関するトラブルや、健康への不安など、お気軽にご相談ください。私たちが法的側面から皆様の生活の安全を支えます。


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